栄養日本

栄養日本4月号に掲載されました。

長文ですが、最後まで読んでいただけるとうれしいです。
<記事の内容です>


手探りの起業家1年生
~ 食楽健康応援団♪「えいよう相談室」10ヶ月の軌跡 ~


Nutrition Support Office
えいよう相談室
代表 宇栄原千春
執筆を受諾するにあたり、私が書いて良いものかどうか、とても迷いました。
起業栄養士として現時点で到達すべきものが見えるのか?と問われれば、やっと登るべき山が見えた!(かな?)というのが正直なところです。エイやっ、と起業したものの迷路の中を迷いに迷っている手探り状態で、気がつくと約一年が経過しました。
本土から遠く離れた沖縄で起業した、こんな私のヨチヨチ体験談でも、起業を考えている方々のお役に立てれば幸いです。

1.どんな仕事をしているのか?
 「えいよう相談室」の主な業務内容は次のとおりです。
 ・クリニックにおける栄養相談:週に1,2回の割合でクリニックにて栄養相談(ヘルスアップ教室)を実施。生活習慣病患者さんの減量指導を主に行っています。沖縄県は全国一の肥満県であり、人口100万人あたりの透析患者数が全国2位(平成17年)と多い県であることから、肥満や糖尿病の対策は急務といえます。しかし、この頻度で栄養士を採用してくれるクリニックは、まだまだ少ないのが現状です。
 ・クリニックにおける透析の献立作成:透析食を提供しているクリニックにおける献立作成、調理指導、患者さんの栄養管理(アセスメントと透析中のベッドサイド訪問)、嗜好調査、ご家族を含めた栄養相談などが業務です。
栄養日本 ・料理教室の開催:2ヶ月に1度、調理設備のある場所を借りて「ダイエットクッキング」を開催しています。契約しているクリニックの患者さん以外にも一般の方も参加可能です。

 ・個人レッスン:個人対応の希望があった方々へ保険の適用外で訪問栄養・減量指導をしています。希望者数は少ないですが、マンツーマンで行うため、満足度の高いサポートです。
栄養日本
 ・『おきなわカロリーブック(書籍)』の製作:各都道府県にも見られるように、沖縄県も独特の食文化を持っています。しかし、その食品や外食メニューのカロリーを知るための媒体がとても少ない状態でした。そこで、カロリー摂取の目安となる媒体として『おきなわカロリーブック』えいよう相談室編を製作中です。“一家に一冊”置いていただける資料となるように、また、肥満県日本一の汚名(?!)返上を後押しできるような本にしようとにがんばっています。
 ・その他いろいろ:地元紙を始めとするメディアへの執筆や、テレビ・ラジオなどのマスコミへの出演、講演会の講師などを随時行っています。マスコミや一般の方々の「食育」や「疾病予防」への関心の高さを感じます。

2.どうして起業しようと思ったのか
私自身の減量経験から、食事面からの減量(ダイエット)サポートをライフワークとして取り組みたいと長い間考えていました。飽食の時代の課題は『美味しく食べて、健康体型を維持する』ことであると感じたので、24時間そのことにたずさわっていられる「起業」という道を選択しました。
平成20年度からは、特定健診・特定保健指導制度が始まり管理栄養士の需要が高まるといわれています。そこで必要とされる指導は、まさに『美味しく食べて、健康体型を維持する』ことではないかと考えたことも起業を考えた一因です。

3.どのようにして起業したのか知識と経験を積んで、いつか「挑戦できる自分」になった時に起業しようと考えていたので、それまでは修業期間と考え、いろいろなことに目を向けて多くのことを学ばせていただきました。お世話になった職場では環境に恵まれ、栄養士業務以外のいろいろな経験もさせていただき本当に感謝の気持ちでいっぱいです。たとえば宅配のお弁当屋さんでは、電話の応対や在庫管理技術を学びましたし、福祉施設では調理員として入職したので調理の技術や調理員さんのご苦労を、身をもって学びました。一番長く働かせていただいた病院では、ベッドサイド訪問からNSTの立ち上げという臨床での栄養管理にたずさわり、口から入った栄養素(薬品を含む)がどのように体を作り、また、どのように体を壊しているかを学びました。
このように職場は変われど、たくさんのことを教わったことが今の礎となっている気がします。
退職後の起業手続きはいたってシンプルです。会社設立ではないので税務署に『個人事業の開廃業等届出書』を提出すれば完了。その後は個人で活動するのか、組織を作って活動するのかを選択し、事業を進めていくという手順でした。

4.経営、運営はどのようにしているのか、その状況は?「えいよう相談室」のスタッフは私を含めて5名(常勤・非常勤含む)。経営、運営についてはノウハウがわからず、初めのうちは恐怖心がありましたが、経営状況は良好といえないまでも、地道にやっていれば何とか運営できているのだと思うようになり、前へ進めるようになりました。  
このような厳しい状況でも、なんとか「えいよう相談室」を運営していけるのは、2人の娘の世話をはじめとする多くの家事を快く(?!)分担してくれる夫、両親、そして私のつたない運営を心からサポートしてくれている有能なスタッフの方々に助けてもらっているからに他なりません。ただ、ただ感謝するばかりです。

5.現状の問題点と今後の課題
経営の柱にしたいと思っていたクリニックでの栄養相談は、依頼数の伸びが今ひとつです。食事指導や減量による治療効果が見込める患者さんはクリニックに多く通院しており、医療側と管理栄養士のタイアップは必要不可欠だと思います。しかし、医科点数が低い現状では採用しづらいのが本音だと思います。そんな中でも採用していただいている医療機関は、どこも志の高い先生方ばかりです。
依頼数が伸びない状況では「えいよう相談室」の存続が危ういと思い、新しい柱となる新規事業を模索しています。事業を継続するには、ひとつの事業だけにこだわっていてはダメだと最近気がつき、いろいろと試行錯誤する日々です。期待した事業がダメだったからとあきらめるのではなく、「栄養・食事」を核とした別の視点からの取り組みを探して、どんどんチャレンジすることが今後の課題です。その第一歩が「おきなわカロリーブック」の発刊となります。

6.これから起業する人へのアドバイス
「起業1年目は大変よ!」と聞いてはいましたが(周りの先輩の慰めかもしれませんが…)、私の場合も本当に大変です。しかし、大変で苦労した分、これまでに感じたことがないほど大きな充実感を味わっています。世界が一回りも二回りも大きくなったような感じです。
起業する方々に対して、まだまだ適切なアドバイスはできませんが、1つだけ分かったことは、「どうせ起業したならチャレンジを楽しむ事」です。現状が苦しくて、困って、助けて欲しい時には、必ず誰かが助けてくれる。今はそんな感じです。
「失敗はあきらめたとき」だそうですから、あきらめずにがんばりますよ!

さて、起業栄養士1年生の体験記は参考になりましたでしょうか?



2007年04月20日at 09:43 │Posted by えいよう相談室スタッフ │Comments(7)
この記事へのコメント
はじめまして。
mixiからたどってきました。
見てるだけで嬉しいです。

僕は沖縄出身なので、
なんか、嬉しくなりコメントさせていただきました。
これからも、読ませてください。
Posted by ロン at 2007年04月24日 18:28
はじめまして。
私は福岡の大学(栄養学科)に通う学生です。
ちなみに、4年生なので受験生です。

先日、研究室の先生の紹介で、「栄養日本」の宇栄原先生の記事を読ませていただきました。私の研究テーマが「アチビー」関連なので、宇栄原先生の「おきなわカロリーブック」が参考になるのでは?ということでした。
栄養士の「起業」という話を聞いたことはありますが、具体的な話を目にしたのは初めてだったので、とても興味深かったです。
そして、この前の2・3月に宜野湾記念病院で実習をしました。栄養日本を読んで宇栄原先生が勤められていたと知り、とても驚きました。研究のこともあるので、一度お話しをお聞きできれば…と思っています。
「おきなわカロリーブック」の完成、楽しみにしています。
Posted by ルリコ at 2007年04月25日 18:44
ロンさん、はじめまして。

コメントありがとうございました。

私と同世代なのでしょうか?

であれば、おきなわカロリーブックはロンさんが懐かしい食材がいっぱい詰まっていると思います。

書店で見かけたら、パラパラとめくってみてくださいね。

こんごとも、どうぞよろしくお願いいたします!
Posted by chiahru at 2007年04月28日 11:40
ルリコさん、はじめまして!

コメントありがとうございました。

宜野湾記念病院で実習したんですね。

美紀さんや尚子さんは6年ほど一緒にお仕事していました。

栄養ケアマネジメントの流れを作ったり、NSTを立ち上げたり、生活習慣病外来で肥満対策のチームを作ったりと、いっしょに汗を流したメンバーで、とても頑張りやさんです。

きっと、たくさんのことが学べたと思います。

さて『おきなわカロリーブック』ですが、本書は主に沖縄で食されている外食メニューや市販食品を掲載しています。

残念ながら「アチビー」(軟飯)は載っていませんm(_ _)mごめんなさい。

研究テーマについてお話できるかどうかわかりませんが、沖縄へ来られる際は、どうぞ事務所へ遊びに来てください。

受験生とのこと。(管理栄養士資格カナ?)

きっと、大丈夫ですよ!頑張ってくださいね!

では、今後ともどうぞよろしくお願いします。
Posted by chiahru at 2007年04月28日 11:56
 初めてコメントします!透析施設に勤務する管理栄養士です。

 透析患者さん数人、針先時、針先に油のようなものがくっついていて圧が上

がったと言う報告をもらいました。患者さんの食事を聞き取りすると、「食事で

変わった事は、たけのこを食べた」と言われました。カリウム以外にTGも高い

方もおられます。

 たけのこを食べ過ぎると血清カリウムに影響は出ると思います。また、食物

繊維も多く含まれ、コレステロールを低下させる作用もあると記載されていま

す。そこで、たけのこの食物繊維に含まれるセルロースとTGの関係、その他

このような症例はありますか?教えていただけないでしょうか?お願いしま

す!
Posted by 透析施設に勤務する管理栄養士 at 2007年05月16日 21:24
 昨日もコメントさせていただきました。昨日申し送れました、私も栄養士会の

会員です。

 先日、たけのこについてコメントしましたが、私なりに針先に油のようなもの

が付着していたと言う患者さんに、日頃の食事内容を聞き取りしたところ、「ケ

ーキ、甘いもの(洋食)、パンなど毎日食べている」と言われました。聞き取り

した食品から単純に推測すると、トランス脂肪酸を含む食品が頭に浮かびま

したが、透析に関係あるという報告をお聞きではないでしょうか?教えていた

だければありがたいのですが・・・! 

 このようなコメント申し訳ないと分かってはいるものの、分かられる範囲内で

けっこうです。宜しくお願いします。
Posted by 透析施設に勤務する管理栄養士 at 2007年05月17日 23:44
透析施設に勤務する管理栄養士さま

投稿ありがとうございました。

抜針時の針先に油のようなものが付着していた方が数名いらっしゃったということですが、そのような状況は私共には経験がありません。
油のようなものが、血液中の脂質なのかどうか確認が必要ではないでしょうか。
血清成分かもしれませんし、透析液の影響も可能性がないとは言い切れません。
医師か透析技師に聞いてみられてはいかがでしょうか。

ご質問
「たけのこの食物繊維に含まれるセルロースとTGの関係、その他このような症例」について申し訳ありませんが、お答えできる症例は存じ上げません。
セルロースは不溶性食物繊維とされ、中性脂肪やコレステロールの改善には主に水溶性食物繊維が役立つと言われています。
たけのこの食物繊維がコレステロールを低下させる作用がという記載をみられたようですが、セルロース(不溶性食物繊維)の作用として、一般的に腸管からの吸収が抑制され、血清脂質や血糖が改善することは考えられると思います。
たけのこの水溶性食物繊維の作用でコレステロールが低下したということも否定できないと思われます。
また、患者様からの食事聞き取りより、ケーキなど糖質の過剰摂取が推測され、中性脂肪が高いのは糖質過剰摂取の影響が考えられます。

腎不全の患者様は、血清脂質は高めになりやすいです。これに対してどう解釈するかは担当医師とご相談されることをおすすめします。
コレステロール値も高値であるならば、おっしゃるとおり、トランス脂肪酸の影響は否定できないと思います。

食事の聞き取りから、この患者様のカリウム、中性脂肪だけでなく、血清リン値も心配になります。

回答に満足していただけるか不安ですが、不明な点がありましたら、またご投稿ください。

えいよう相談室 担当 YUKA
Posted by えいよう相談室 at 2007年05月21日 14:51
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